リヒター展@川村記念美術館

あけましておめでとうございます。
みなさん今年もよろしくおねがいします。

ということで、2週間前 、川村記念美術館にリヒター展を見にいってきました。佐倉という場所をよく知らなくて、予想以上に遠くて遠くて(駅からも遠い)、そして寒くて大変疲れましたが、とてもよかったです。
回顧展ということで、大作が一堂に会していて、盛りだくさんでした(もちろんドイツでの巡回よりは大分点数が減っているようですが)。フォトペインティングの作品は筆の痕跡が見てとれて妙な生々しさがあり、またガラス板の作品は、塗り固められた色とガラスに反射する光とガラスの物質の感触が混じり合って、実物を見ることでしか分からない感覚だなと思いました。全般的に画集などで見ていた感じとは結構違う、と思いました。
これだけの数の作品を間近に一気に見てみて、異なる様々なタイプの作品に通底するテーマのようなものを少し感じることができたのが発見でした。純粋であるが故の壊れやすさや、とでもいうのでしょうか。。。リヒターの絵画に対する戦略的なことはあまりよく分からないけれども、アブストラクトペンティングの作品をじっと見ていると、その塗り固められた表面を擦った先にフォトペインティングの風景が立ち現れてくるのではないか、そんな気がしました。
そんなリヒター展でしたが、それ以上に常設のロスコの部屋に感動しました。ここはすごくいい。30分くらい居てしまいました。
壁全面がロスコの作品に囲まれている部屋なのですが、少し薄暗くてライトも黄色っぽくて(テートモダンギャラリーはもっと暗いらしいです)、一瞬この展示はなんだと思いましたが、その暗さと雰囲気に体が慣れてくると、はじめはあまりよく見えなかった細部が段々と眼前に迫ってきます。そして真ん中にある椅子に腰掛けてじっとしていると、部屋全体がまるで錆びている最中の鉄のごとくにゆっくりとにじり寄ってきて体と混ざり合う様な(生き物っぽい感じでも、また不気味な感じでもない)、ゆったりとした気配を感じることができます。静謐とでもいうのでしょうか。こんなにリラックスできる空間はあまりないと思います。この為にまた行きそうです。

川村記念美術館は、作品のコンセプトや制作背景などについてあまり多くを語っていないところが好感を持てました。作品を鑑賞する上で大切なことは、まず作品それ自体から自分なりに何かを感じとることだと思います。もちろんコンセプトは重要だと思います、が、最近は(あまり昔は知らないが)あまりにもコンセプトや仕掛けのみが強調された様な展示が多い気がします。そんな中、余計な解説なしにひとつひとつの作品に丁寧に向き合って鑑賞していく、という本来スタンダードである筈の展示にほっとしました。(リヒター展で使用していた柵を兼ねたキャプションの展示形態も良かったです)